Opus.92

LPレコードの感想など。

バーンシュタイン指揮ニューヨークフィルハーモニー管弦楽団チャイコフスキー交響曲第6番ロ短調作品74「悲愴」

悲愴は、このボックスを手に入れて最初に聴いたので、1番から順番に聴いている今回が2回目となる。1回目はそうではなかったが、ここまで続けて聴くと、レニーの楽しみ方が堂に入ってくる。1楽章の冒頭から既に、悲しみに震える心の響きとそれに向き合う強さが激しく交錯し、それを巧みに表現するNYPOの優しく落ち着いた弦楽器の響きに支えられて聴き手を惹き付ける。次々と押し寄せるチャイコフスキーの心の波の重なりを圧倒的な表現力で積み上げ、感動的に1楽章を終える。

予想通り早めのテンポで始まる2楽章。ここでも中低音の輝きは増し、4分の5拍子を精巧に、かつ物語を語りながら組み立てた音楽は聴き手に絶えることの無い発見の機会を与えてくれる。アクセントの印象などは実に上品であり飽きることは無い。最後は、弦を簡素に響かせて終わる。

非常に細かい図柄を丹念に組み合わせたような3楽章。激しく押し寄せる音の圧力に普段は冷静なタンノイもご機嫌。

4楽章は、まるで厚い布地を強い意志で一気に切り裂くような弦合奏で始まる。レニーが握った拳が短く鋭く振られたのが目に浮かぶ。絶妙なホルンに導かれて弦楽の合奏が頂点に向かう様は美しく荘厳でもある。やがて、冒頭で聴いた力は途中、ティンパニや金管低音部を伴い、強弱を繰り返しながらも次第に衰えていき、タムタムの合図とともに、受け入れざるを得ない平穏さに身を委ねて行く。ストーリーテラーとしてのレニーの巧さとその世界観の深さと迫力を感じざるを得ない。