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Opus.92

LPレコードの感想など。

ラファエル・クーベリック指揮アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団 ベートーベン交響曲第3番変ホ長調作品55「英雄」

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1971年10月の録音。つまり、クーベリックのこの一連のベートーベン交響曲録音はベルリンから始まったことになる。そしてカラヤンが君臨していたベルリンフィルとの演奏に英雄を選んだのはDGG社としては野心的な選択だったような気がする。

第1楽章は、実は最初聴いた時はクーベリックとベルリンフィルのテンポ感の違いか、それを聴く私のテンポ感の違いなのかしっくりこなかったが、2回目に聴いた時は落ち着いて耳に入ってくるようになった。恐らくクーベリックの繊細で詳細を静かに丁寧に聴かせる手法を、ベルリンフィルやこの曲に対する私の先入観が邪魔をしたのかも知れない。それだけ、曲へのアプローチがクーベリック独特なものということも言える。一つ一つのフレーズを充分な時間を取って演奏を進めるクーベリックの棒の動きをじっくりと感じながら滑らかな音色で対応するベルリンフィルの演奏レベルの高さには改めて驚かされる。

第2楽章に入るとそのクーベリック的な深淵で人間的な暖かみを音色に練り込む芸術的な世界が大きく目の前に広がり、そこから見える景色は神々しくもある。一音一音、楽器毎にクーベリックが彼自身の言葉と響きを与えており、それを浴びる様に聴くことができる喜びはアナログレコードの醍醐味とも言える。

その感動は第3楽章に入っても続く。全体的に軽く明るい空気感の中、音の発見者といったクーベリックに紹介されるフレーズは快適である。

第4楽章も全体的には静かに、というか静かに聴いてしまうのだが、弾んだ音楽で満たされる。フォルテシモの入り方も実に丁寧である。